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いわき地域学會にご参加ください
  【いわき地域学會代表幹事 山名隆弘】

「いわき」と「地域学習」
  【鈴木重美】

 昭和59年(1984)秋、いわき地域学會は発足しました。平均年齢42歳。おびただしい打ち合わせと役員会を経ながら、意見をぶっつけ合い、よじのぼってきました。
 ここに、発起人代表の里見庫男氏(現いわき市観光物産協会会長、福島県教育委員)の往時の文章をはじめ、故鈴木重美氏(当時、いわき市教育委員会文化財保護係)の想い、さらに、吉田隆治氏(現当会副代表幹事)による「地域学會図書刊行のことば」を再録します。
 それらの文脈をたどられて、多くの方々がいわき地域学會に参加くださるよう、お願いする次第です。

 

私たちの住む「いわき市」は、市域の広いマチとしてよく知られている。豊かな自然に恵まれ、日本一の面積を有し、香川県にはば匹敵する広さをもつという。海洋性気候で、四季を通じ気象条件に恵まれ、比較的温暖であることから「東北の湘南」ともいわれ、三四万余の人びとが生活している。
 これほ、いわき市を紹介するときの一般的な枕詞である。しかし、私たちの周りを眺めた場合、知らなすぎることが多いことに気がつく。故事にもあるように洋の東西を問わず、何をなすにもその「地域」(郷土)をよく知る必要性が説かれている。
 「郷土」「地域」についてひもといてみると、まず、 十九世紀末から二十世紀初頭にかけて、ショルツ(ドイツ)等によって提唱された「郷土」(Heimat Kunde)こについての教育思潮は、「時間的(歴史的)、空間的(自然地理的)な環境として位置づけ」単なる自然のみならず、体験的に同化し、精神化した自然との複合体であるという考え方であり、昭和初期にわが国の教育にもとり入れられ、第二次大戦後にも郷土教育として唱えられた経緯がある。つぎに「地域」(area, region)について、地理学では、一定の性格をもつ地表面の部分(範囲)右指し、「地域社会」については、「一定の社会的特徴をもった地域的範囲のうえに成立している生活共同体」(広辞苑)と解釈されている。戟後、アメリカにおいて確立した「地域研究」(aria studies)という学問がある。特定の地域について実証的に研究する活動で、地理学、歴史学を基礎にして人文科学、社会科学や自然科学の一部を含めた学際的(inter disiciplinary)研究をめざすものである。地域のとらえ方において、地理学以外の多様な方法をも包括し、継続的な研究が要求されるものであり、深く地域内容を探究し、地誌としてまとめられる深さと広さに達しなければならないものである。地誌は、いうまでもなく、特定の地域を多面的に研究し、地域の特性を体系的に記述したものである。
 ナショナルプロジェクト的規模のことを述べたが、事の大小に関わらず方法論的には矛盾を来たさないものであり、私たちが、現実に住んでいる地域の研究にもあてはまるものである。私たちの住む地域あるいは地域社会について、自然や風土、歴史や文化財、あらゆる生活や教育・文化・産業活動を行うための環境、そしてこれらに関わる人間集団や社会関係をも含めた課題解決のために総合的共同学習を重ね、基礎的な調査資料を蓄積し、よりよい地域とするために、より深く、広く地域を知ることが迫られているといえよう。
 このたびの「いわき地域学会」の発足は、時宜を得た試みであり、試行錯誤を繰り返しながら、着実に輪を広げ、「二十一世紀のいわき地誌(風土記)」をまとめようとするとき、その基礎資料を提示できるような機能を果す活動体としての意義を見出したい。
 【いわき地域学會潮流 第1報(昭和599月刊行)故鈴木重美氏(平成67月逝去)より】

 「いわき地域学会」の発足総合的な学術調査がねらい   【里見庫男】

 今や、専門的な分野が、共同して調査し報告する手段は、全国的に圧倒している。
 「いわき地域学会」は、地質学・地理学・歴史学・考古学・民俗学・生物学他の立場から、設定心た地域に総合的にアプローチし、『いわき総合学術調査報告書しとして、年一回報告することを目的とする。従来、各分野とも、ともすれば妥協することなく、個々それぞれの発展にのみ力を注いできたために生じた幣害を、除去し、相互理解のもと、青年たちが共同作業を推進しようとするものである。
 これとは別に、『潮流』は、読者や同好者とコンタクトを保ちながら、広く発表の機会を確保するために作成するパンフレットである。年四回発行。多数の投稿を待ちたい。
 当会は前途多難であるかも知れない。しかし、次の世代に、より秀れた報告書を残しておきたいという点で、会員の意志は一致している。かつて、一部の先輩がそうであったように、若手の育成を疎かにすることはないであろう。二十一世紀のいわきの文化の、確かな礎になるよう、当会の興した事業を通じて、地道な努力を続けていくつもりでいる。題字は石川葎氏に依頼した。

 

いわき地域学合図書の刊行
  【1987年6月 いわき地域学會出版部:吉田隆治】

 文化は狭義に解釈されてはならない。われわれは広く人間の生活様式一般を文化と呼ぶ。それは環境としての自然に働きかけ、それを利用することによって発展してきた。それは今後、装置としての文明に影響され、文明を受容することによって変貌していくであろう。
 その是非はしばらくおき、価値混迷の時代にあって、われわれがなすべきことの一つは、地域文化の仕組みを解き明かし、現在の地域社会の理解と未来考察に有効な情報を供することだと信じる。いわき地域学合図書はそのための一助になるべく生まれた。
 われわれは、われわれが現に生活している「いわき」という郷土を愛する。しかし偏愛のあまり眼右昌写りせてはいけないとも考える。それは科学的態度を放棄した地域ナショナリズムにほかならないからである。
 人文科学、社会科学、自然科学を動員した学際的な地域研究の成柴を市民に還元すること。
それによって次世代以降に歴史的・文化的遺産を引き継ぎ、新たな文化の潮流を確かなものにすること。その水先案内人としての書物を、われわれは市民と協同して世に送り続けたいと思う。

 

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